「光学機器大手「オリンパス」の損失隠し問題で、証券取引等監視委員会が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑について行政処分にとどめる方向で検討を始めたことにより、同社の上場廃止が回避される可能性が出てきた」そうです。その理由としては、
損失隠しはあくまでも過去の問題であり、現時点では簿外に飛ばしている損失はない。現在の財務諸表は粉飾ではない、だから上場廃止までする必要はない、ということのようです。
簿外に飛ばしている巨額の損失について、穴埋め中に見つかれば粉飾決算となって大問題になり上場廃止になるが、ぎりぎりでも穴埋め終了後に見つかったのであれば問題ない!上場廃止の必要もない、というのが日本の証券業界の判断基準の様です。
要は悪いことをやっても見つからなければ問題ない(これは見つからないんですから摘発のしようもないので、残念ながらしょうがないですが)、たとえ見つかったとしても現時点で悪いことをしていなければ問題とされない、というのが日本の証券業界の姿勢だと世界的に発信するようなものです。
オリンパスと同じように、過去に損失を簿外に飛ばしていた会社は、今頃ホッとしているのかもしれませんが、こんな判断基準で日本の証券市場が世界から信頼されるのでしょうか?
私は非常に疑問に感じます。
11月に入ってからオリンパスショックで日本の株式市場だけが世界から取り残されて下げている中で、不正をしてもその時に見つからなければ問題とされないというような風土が世界に伝われば、さらに海外投資家の日本市場離れが進んでしまうと思います。加えて日本国内の投資家でもこんな市場には怖くて参加できないと思います。
いくら東証や監督官庁が大目に見て許してくれたとしても、株価は許してくれません。そんな不正を行っている会社の株価は大暴落してしまいます。
不正を行った会社は上場廃止にもならず、直接的な影響は受けないかもしれませんが、その会社に投資していた株主だけが大きな損失を被るという形で被害を受け、馬鹿を見るわけです。
そんな上場企業の都合だけを優先するような市場に投資家が興味を持つでしょうか?
まだ今後の展開は分かりませんが、目先の都合を優先して今回の対応を誤ると、国内・海外を含めた投資家の日本市場離れを加速し、将来あの時から投資家の日本市場離れが加速したという記憶に残るトピックになるかもしれません。
それが本当の意味でのオリンパスショックになるのかもしれませんね。
今回の問題への報道のあり方、監督官庁などの対処の仕方を見ていると、日本の投資家も今後の投資方針を真剣に考える局面に来ているのかもしれないと感じるようになってきました。
不正をした会社は守られても、投資先企業の不正によって損失を被った投資家は自己責任の一言で片付けられてしまうんですから、ますます株式投資離れが進んでしまいかねません。
だいたい巨額の損失飛ばしに関与した人しか経営トップになれないようなオリンパスという会社は、非常に問題のある会社だと感じます。トップの姿勢が不正は隠して処理するという方針のオリンパスという会社は本当に信頼できる会社なのでしょうか?
現時点ではオリンパス社の製品については問題視されていません。
ヤマダ電機などの家電量販店の経営トップのコメントでも、デジカメなどオリンパス社の商品について特になにか対応を行うことはないと説明しているようです。内視鏡などの医療機器についても特に問題視する発言は無いようです。
しかし不都合なことは隠してしまえ!という風潮の会社が作る製品を、本当に信頼して使い続けることができるのでしょうか?
製品開発などについても、当初の計画通りに進まないことはよくあります。
新商品の発売を間近に控えた段階で目標とする品質レベルに少し足りないという状況になった時、再度開発をやり直してあくまで目標品質レベルの達成を目指すのか、あるいは少々のことなら品質をごまかして発売してしまうのか、こういった判断を求めらる場面でもトップの姿勢やその会社の考え方が大きく影響してくると思います。
大型の新商品発売であれば、その新商品効果も織り込んで業績計画も発表しています。新商品発売が遅れれば、追加の開発費も発生しますし、売上も計画未達となってしまいます。売上とコストの両面から業績下押し要因になるわけです。そのような状況で、業績未達となっても品質を優先するのか、あるいは方法は問わないので発売日を遵守しろ!となるのか、それは企業のトップの日頃の姿勢やその会社に脈々と受け継がれているDNA次第だと思います。
問題は隠してしまえ!それで今までうまく行っているではないか!ということになれば、製品開発などについても粉飾がされないとは言い切れないと感じます。デジカメなどは少々品質が低くても大きな問題にはならないと思います。写真の品質が多少悪くても人間の目では分からないかもしれませんし、撮影の仕方や画像を映しているモニターの問題だと思ってくれるかもしれません。
しかし内視鏡などの医療機器だと、解像度がスペックより低くて腫瘍などを見逃してしまった場合、最悪命に関わる問題になりかねません。こちらもスペックだけの問題ではなく、医療機器を操作している人の技術レベルや患部の状態を判断する経験などの問題もあるので、すぐに問題が表面化することはないと思いますが、企業姿勢に問題がある会社の商品よりは、問題のない会社の商品を使いたいというのが多くの人の気持ちだと思います。
製品開発などについては一切の不正を認めず妥協しないで開発しているが、決算については何でもあり、飛ばし放題だったのでしょうか?
企業の考え方というものは随所に表れてくると思うので、非常に大事だと思いますし、今回のオリンパスの粉飾決算疑惑も氷山の一角ではないのかな〜という心配をしてしまうんですが、杞憂なのでしょうか...
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タグ:オリンパス上場廃止
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確かに日本の証券業界の判断は「どうかな?」という感じですね。「飛ばし」に関しては「時効」ということですね。そんな時効なんてあるのかなぁなんて思ってしまいました。
「飛ばし」や「粉飾決算」の発覚時期によって大きく処分が変わるというのは、少しおかしいのではないかなと感じます。
悪事を働いている最中に見つかると上場廃止だけど、悪事が終わった後に見つかれば問題なし!とされるのではあれば、さらに巧妙に隠そう!という方向に進んでしまいそうで心配になりますね。