まずはゲオの臨時株主総会後に1人ずつ行われた挨拶の内容をまとめてみます。
北島孝久取締役 特捜部出身の弁護士
よろしくお願いします。微力ながら、コンプライアンスについては最近特に社会を騒がせている問題で、従来は若干ないがしろにされている面もあったが、非常に重要な問題です。コンプライアンスを怠ると大きな失態につながる恐れがある。この観点からコンプライアンスに則って経営されているかしっかりと監視していきたい。
大森一志取締役 特捜部出身の弁護士
私はガバナンスの強化を中心に、内部統制をしっかり構築するという方針で行っていきます。どうぞよろしくお願いします。
小宮山太取締役 公認会計士
微力ながらコーポレートガバナンス強化のため精一杯頑張りますので、どうぞよろしくお願いします。
荻野恒久取締役 公認会計士
私も他の社外取締役と同様、コーポレートガバナンスの強化に協力して取り組んでいきますので、どうぞよろしくお願い致します。
志村直幸取締役 公認会計士
私もコーポレートガバナンス強化に取り組んでいきます。株主価値増大のために、最大限予断を排して努力していきたいと思いますので、よろしくお願い致します。
森原哲也社長から最後のあいさつがあり、臨時株主総会は無事?終了となりました。
株主の皆様方のご協力により、滞りなくご審議頂けましたことを厚く御礼申し上げますとともに、今後も変わらぬご支援を賜りますよう宜しくお願い申し上げます。
新しく選任された取締役の方々から簡単にあいさつがありましたが、少し物足りなく感じました。
社外取締役の方々に求められている役割は、大きく分けて2つあると思います。
1つはコンプライアンス軽視が甚だしいゲオの体質を改善することです。
この点では今後ある程度は期待できそうだと思います。あいさつでも5名ともこの点を強調していました。
もう1つの役割は、今回の内紛の原因にもなった不明朗な取引の実態がどうなっているのか徹底した調査を行うことです。
過去の問題をうやむやにしたままで、今後はコンプライアンスを強化します!と言っても、本当の意味でのコンプライアンスは根付きません。過去の不明朗な取引をお座なりの調査で終わらせてしまうと、結局はやり得だったということになり、見つからなければいいいんだという風潮になりかねません。
まずは徹底的な調査を行い、過去の膿を出し切ったうえでコンプライアンス体制を構築しないと意味がありません。内部には膿がいっぱい溜まっているのに、表面だけコンプライアンスでお化粧しても無駄ですし、実態は変わらないのに見栄えが良くなるだけに、騙される人が増えて余計に迷惑です。
社内の監査体制では十分な調査ができなかったことが一番の問題なので、まずは社外取締役を中心とした調査チームを作って、徹底的に調査して欲しいと思います。
臨時株主総会が開かれるまでは、私も錚々たるメンバーの社外取締役に期待していました。
しかし株主総会の中で社外取締役の役割として、森原哲也社長から下記の様に説明がありました。
我々常勤取締役の職務の執行を監督して頂くことと、取締役会に出て頂いて取締役会の運営や意思決定について適切なアドバイスを頂いたり、コンプライアンスについてご指導いただくというのが主な役割
つまり月に1回開催される取締役会に参加する程度を想定しているようです。5人とも今までの仕事でも忙しいでしょうし、それほどゲオに時間を割け無いようにも感じます。形ばかりのコンプライアンス体制はできるかもしれませんが、月に数回社外取締役が出社する程度では本当に魂が入るのか疑問です。今までもコンプライアンスを担当する部署はありましたし、形だけのコンプライアンスはあったと思います。
1ヵ月くらいゲオにかかりっきりで徹底的に調査するなら少しは期待できそうですが、臨時株主総会での森原社長の発言からは、
取締役会に来てくれるだけで十分です!先生方もお忙しいでしょうから
と牽制している感じがしてしまいました。
社外取締役中心の調査委員会を作ったとしても、どの程度問題が明らかにできるかは疑問です。現状の監査役会を中心とした社内調査には協力しない人もいるようです。社外取締役と言っても捜査権があるわけではなく、調査を拒まれたり、口裏を合わせて嘘を付かれたらうやむやにされてしまう可能性も高いと思います。
このように考えてみると、せっかく錚々たる社外取締役を迎えましたが、過去の不明朗な取引を明らかにし膿を出し切るという点ではあまり期待できないような感じがしてきました。5人の社外取締役の方々の挨拶でも、コーポレートガバナンス強化に取り組むという発言ばかりで、私が期待していた過去の不正も徹底的に調査するという発言はありませんでした。
9月以降ゲオ以上に大きな話題になっている大王製紙の井川意高会長に対する84億円の巨額融資問題についても、弁護士などからなる特別調査委員会を作って調査を開始したものの、井川意高会長が聞き取り調査に応じたのは1度だけであり、資金使途についても詳しくは説明しなかったようです。
結局大王製紙としては社内調査では限界があると判断し、井川意高会長を刑事告訴する方針を固め、東京地検特捜部が動き始めたようです。
ゲオでもきっと同じなのではないか?と感じます。社外取締役が5名入っても過去の膿を出し切ることは難しいと思います。大王製紙と同じように、ある程度社内調査をしたうえで特別背任罪または背任罪で告発までしないと、徹底的な調査は不可能だと思います。
社外取締役も含めてそこまでやる気があるのか?が重要になってきます。
まずはその試金石となるのが、現在調査中と説明していた監査役会を中心とした調査結果です。当然その調査結果は社外取締役もチェックしたうえで出てくるので、まずはその調査結果を待ちたいと思います。
もしお茶を濁すような内容だったら、真の意味でのゲオの再生は無理ということになります。
コーポレートガバナンスの観点から注目していた山口利昭弁護士もご自身のブログでゲオの臨時株主総会について書いています。読売新聞にも山口利昭弁護士のコメントが掲載されています。
→ ビジネス法務の部屋 どうなる?ゲオ社のガバナンス
一方で、社外取締役が5名入ることで大きく変わる部分もあります。ゲオの臨時株主総会で提案された2つの議案の意図についてのご意見を頂いたので、この点もあわせてまとめてみます。
ブログに寄せられたゲオの2つの議案の意図についてのご意見
遠藤氏の戦略は、
2号議案で経営の透明性を高めつつ取締役会の多数を確保すること
1号議案の任期短縮で不明朗取引に関与した取締役を次回総会で選任候補として挙げない(取締役会の多数決で可能)ことによって、遅くとも来年の6月には経営陣の浄化を完了させる
というものだと推測しています。
沢田氏派が大橋氏を「辞任勧告決議」はできても「解任」はできないのと同様に、遠藤氏も「不明朗取引に関与した役員」といえども、取締役会で多数を確保しても「解任」はできません。解任するにはまたまた臨時株主総会を開催するか、定時株主総会に解任議案を出さねばならなくなってしまいます。
さすがに、総会で前会長・前社長の取締役の地位を解任する議案を出すのは企業価値を棄損することになるので避けたいところだと思います。
1号議案を出しておかないと、「不明朗取引に関与した役員」に居すわられた場合に、2013年6月まで火種を抱えたままになることになるので、それを避けたかったのだと私は感じています。「解任」と「辞任勧告」の言葉の違いを正確に認識すると、1号議案の真の意味合いが判明すると思うのです。
加えて、2号議案の可決に遠藤氏は絶対の自信を持っていたと思います。しかし、1号議案は3分の2以上の賛成が必要な特別決議ですから、会社側と決定的に対立しての総会開催では必ずしも可決できるとは限らないので、妥協として遠藤氏も大橋氏も隠忍自重で総会に臨んだのだと推測しています。
これは、十分に論理的整合性のとれた推論だと思っているのですが、いかがでしょうか?
私もご意見の通りだと思います。
社内調査を進めることで過去の不明朗取引を明らかにし、みずから辞任するように仕向けるか、あるいは大橋取締役にしたように、役職をすべて外して単なる平取にして来年6月の株主総会で退任いただく戦略なのだと思います。
ただ疑問に感じるのは、遅くとも前日の段階で両議案とも可決することは分かっていたはずであり、株主総会中も隠忍自重(大辞泉によると、怒りや苦しみをじっと抑えて外に表さず、軽はずみな行動をしないこと)する必要はなかったのではないか?という点です。
まだ調査結果が出ていないことなので軽はずみな言動はできないにしても、なぜ臨時株主総会を請求しなければならなかったのか?や大橋取締役の主張などは、株主に説明しても良かったと思います。
ちょっと隠忍自重し過ぎなんじゃないの?と感じたことから、臨時株主総会での遠藤派の勝利は確定したという状況の変化を受けて、もしかしたら前日までに両陣営で和解が成立したのかな〜などと心配になりました。杞憂に終わるといいんですが(^_^;)
今後どうなるかは社内調査次第ですが、遠藤派が取締役会の多数派を握ったことで、遠藤結蔵取締役はいつでも社長に就任できます。取締役会を開いて社長を解任して平取にして、自分が代表取締役社長になればいいだけです。遠藤結蔵取締役の考えとしては、社内調査を迅速に終わらせて、来年の株主総会をまたずに代表取締役社長に就任するのではないでしょうか?
社内調査を迅速に終わらせるためには調査に長けた外部の人間が必要ですし、代表取締役社長になるためには、最低でも5名の社外取締役が必要です。これらの目的を達成するために今回臨時株主総会を請求したわけですし、今のところ計画通りに進んでいます。
徹底した調査という点では社外取締役といえども機能しない可能性が高いと思いますが、取締役会で多数派を握るという点では十分に機能すると思います。
社内調査結果も含めてゲオにどんな動きが出てくるのか、今後も注目していきたいと思います。
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