2011年9月15日(木)の株価 354円(JASDAX 2427)100株単位 12月決算
PER 7.8倍、PBR 1.57倍、配当利回り 2.26%、株主資本比率 31.1%
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上場以来の株価は上記の通り低迷しています。リーマンショックなどもあり、派遣切りなどが社会問題化して人材派遣業界に対する風当たりが強くなったので、やむを得ない部分もありますね。
業績も下記の通り景気変動の影響をダイレクトに受けており、非常に不安定です。
2011/12計画 34,580百万円 655百万円 45.40円

お土産はありませんでした

説明は土井春彦会長兼社長が行い、並川経営企画室長も出席していました。
アウトソーシングの社員数は7,808名で、メーカーの製造現場で働く外勤社員が7,188名、営業などの内勤社員数が620名。外勤社員数が増えると業績が伸びる。日本経済団体連合会にも参加している。
製造メーカーは受注量に合わせてフレキシブルに人員を増減させないと、新興国メーカーとのグローバルな価格競争に勝てない。生産現場では生産アウトソーシング業者の活用が主流になっている。
アウトソーシングは人材派遣型や請負型などの生産アウトソーシング事業と、メーカーが直接雇用する期間社員に関わる業務を代行する管理業務アウトソーシング事業を行っている。
生産アウトソーシングは需給調整手段として国内メーカーの95%が活用しているなくてはならない事業になっている。それにもかかわらず、リーマンショック時に派遣切りが社会問題化したが、これは人材派遣業界が旧態依然とした業界で、法整備の遅れから古参業者のほとんどが管理部門も持たないダーティな業者で、秩序のない価格競争を展開していた。そのツケが派遣労働者に回り、低賃金や各種保険への未加入などで、雇用解約と同時に住まいも無くし路頭に迷う労働者が急増した。本来雇用解約についての責任は派遣業者にあるが、労働者との雇用解約が全うできず、その責任が派遣先のメーカーに付け替えられて、マスコミ報道が激化した。
海外で派遣が認知されている国では、正社員より派遣の方が給料が50%ほど高い。いつ雇用を切られるか分からないリスクがある分給料が高くなっている。派遣切りが一時社会問題化したものの、製造派遣はメーカーからも労働者からも支持される必要な雇用形態です。
創業時の思いは、世の中に支持されながら、人材派遣業界で100年以上存続できる会社を作りたいと考えたが、実態が不透明な業者が多いためにダーティなイメージが定着してしまった。
(注記)という土井春彦社長も経歴を見るとダーティなイメージの強いクリスタル出身です。クリスタルはコンプライアンスを軽視した結果、6千億円を超える巨大な人材派遣グループに成長しながら、グッドウィルグループに買収され、結局両社とも破綻してしまいました。クリスタルで本流を歩み反面教師にしているのか、コンプライアンス重視はお題目なのかは説明を聞くだけでは分かりませんでした。
業界の認知度の低さが一番の不安材料であり、コンプライアンスを重視しているアウトソーシングが、業界に影響力を与えられるトップカンパニーになることにより、業界を牽引し環境整備を行っていきたい。
アウトソーシング業界は最盛期には100万人を派遣し3兆円市場だったが、古参業者が輸送機器などの主要業種を押さえ、7割の市場を独占していた。アウトソーシングは後発業者として、コンプライアンスを差別化戦略に市場参入したが、メーカーニーズには合致していたものの、派遣業者を入れ替えると既存の派遣労働者の大量解雇が発生してしまうため、古参業者を切り崩せなかった。
しかしリーマンショック、東日本大震災という2度の市場リセットにより、市場規模は約1兆円35万人程度まで縮小し、メーカーは本来の業者選別基準通りに当社を選択できる環境が整ってきた。コンプライアンスを担保できない業者には発注しにくくなってきた。
今後の市場回復期において、コンプライアンス重視という優位性を確保したことにより、トップカンパニー獲得の好機と捉え売上成長50%をコミットメント。
今回策定した中期計画は、市場が3兆円から1兆円まで落ちたところからのスタートであり、半分の1.5兆円まで戻るだけでも1.5倍になる。リーマンショック前は、3兆円市場を5千社で取り合っていたが、メーカーの業者選別基準の厳格化により、回復市場に参入できる人材派遣業者は千社程度に淘汰された。
と資料には書いてありますが、一方で土井春彦社長は業者数は1/20に減少したと説明しており、どちらが正しいのでしょうか?
市場の回復および業界淘汰を背景に、売上成長50%は十分に可能であり、もっと高い成長ができると考えている と土井社長は強気の発言が目立ちました。
ここでアウトソーシングの過去の業績をチェックしてみます。

上記グラフの青色棒グラフが売上の推移です。2007年度までは順調に伸びていますが、その後はリーマンショックの直撃を受けて大幅減収となりました。赤色の棒グラフは2006年に発表された中期計画ですが、初年度から未達となり翌年に見直しを行っています。それがピンク色のグラフです。100年に一度というリーマンショックがあったとはいえ、どちらの計画も大幅に未達で終わっています。赤色のグラフだと素晴らしい成長を遂げたんですけどね

過去の実績からすると、今後は毎年50%以上の売上成長が可能という土井春彦社長の発言をそのまま信じるのはちょっと無謀な感じがします。環境が変わってきているのかもしれませんが、超円高の影響で製造業の海外移転が進んでおり、土井社長の想定通りに国内市場が伸びるのかは、慎重に考えた方がいいと思います。
今回発表した中期経営計画 Vision2014:Vector to the TOP では下記ビジョンを掲げている。
顧客に選ばれる業者No1
求職者に選ばれる業者No1を経て
生産アウトソーシング業界No.1になる
事業環境としては、輸送機器および建機・建材業界中心に復興特需が拡大
復興特需終了後は、円高や電力問題等を背景に生産拠点の海外移管進行が懸念される
海外移転先として注目は、人口6億人以上を有し、今後継続的な成長が期待されるASEAN地域
日本国内に残るのは、付加価値の高い製品や自然エネルギー・環境関連など
以上の環境認識を背景に、中期の重点戦略として下記の4点に取り組む。
1.震災特需の獲得による市場シェア拡大
2.ASEAN地域を中心としたアジア人材ネットワーク確立
3.研究・開発部門を含む第3次産業における事業規模拡大
4.外勤社員の生活水準引上げ
業界No1の給与にするための戦略は、募集経費の効率向上を強化する。今期中にある程度までは目途をつけたい。給与をアップすることで一時的に粗利は悪化するが、アウトソーシングは待遇が良いと評判になれば、多くの人が集まり採用経費を中心に販管費が低下する。それをさらに待遇改善に回すポジティブスパイラルにより、利益率を低下させることなく外勤社員の生活水準を引き上げ、更なる優位性を確保する。

今までとは異次元の強気の計画



過去の中期計画とはグラフの傾きが違います。過去の中期計画が弱気に見えてきた(笑)
株主還元については、成長を重視しているのでM&Aなどに備えた内部留保が必要となり、これまで同様配当性向10%を目途とする。配当性向は低いが利益が大幅に伸びるので、利益拡大に伴う増配を想定している。成長がターニングポイントを迎えたら、配当性向の向上も考えたい。
以上で説明は終了となり、質疑応答となりました。
(1)中国展開は難しいと思うが、どんな点に苦労しているのか?
→中国とアセアンは分けて考えている。アセアンは日本と同様のビジネスができると思う。中国は人材派遣については国営企業が押さえていて、日本の会社も含めて外資系はなかなかできない。研究開発など技術部門が中心になる。国民性では自己主張が強くて、労働争議は日常茶飯事。明日から給料を上げてくれなど日本ではあり得ないような要求もある。こうした要求に対する対応が難しい。
(2)同業者が一緒になって、アウトソーシングについて中国政府に法制化を求める動きが報道されたが、日本の同業者でまとまって働きかけるなど考えているのか?
→法整備はできるかもしれないが、日系の会社がどこまで派遣などをやらせてもらえるのかまったく道筋が見えていない。中国よりも親日的なアセアンの方が事業展開しやすいし、外資優遇策もある。なのでそのような活動にはあまり賛同していない。
(3)2014年には1,170億円の売上目標を掲げているが、国内もかなり伸ばさないと達成できないと思う。2014年の市場規模をどう想定して計画を作っているのか?日本国内で本当にこんなに伸ばせるのか?
→けっこう不透明な部分もあるんですが、2兆円くらいまでは回復すると見込んでいる。現状の倍くらいに相当する。自社で採用して伸ばすこともやっていくが、ここには書きにくいが淘汰も見込んでいる。同業他社の淘汰も含めれば十分可能な数字だと思う。今はコンプライアンスが担保された業者しか相手にされないので、受注を取るのは難しくない。問題は需要に応えられるだけの採用ができるかだ。現状月間1,400名を採用する体制ができているが、これを今期中に2,000名まで持っていきたい。このペースで採用を増やしていけば700億から800億までは売上を伸ばせる。残りは同業者のM&Aで伸ばしていく。
(4)2千名の採用となると、教育などの体制は大丈夫なのか?
→説明したように派遣が増えると見込んでいる。もちろん教育は必要で、特に安全教育は大事だが、教育期間中も受注した金額は頂ける。派遣の場合、基本的に派遣先のメーカーで教育することになる。
(5)中期計画を見ると驚くような数字が並んでいるが、今期は大幅な減益を見込んでいる。今期は減益なのになぜ来期からは大幅な増益が実現できるのか?
→今期は18億円を見込んでいたが、東日本大震災の影響で3月〜6月まで稼働率は期初計画の1/3になり、一時はマイナスになった。この特殊要因で今期は減益を見込んでいる。
(6)配当性向10%ということだが、今後増益になれば配当も増えていくと思うが、今期はどうなるのか?
→今期は8円の予定です。
土井社長の説明を聞くと、派遣社員の方々の待遇も良くなり、アウトソーシングの業績も良くなり、株価も上がりそうに感じますが、ホントに実現できるの

人材派遣業界各社の3年後の売上目標を合計すると5兆円くらいになっているかも

さらに言えば、どこの会社もコンプライアンスを重視していると表面上は言うと思います。今の時代、うちはコンプライアンスなんか気にしませんよ!なんて言う会社はないでしょうから


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