サイボウズは中小企業向けのグループウェア サイボウズOffice、サイボウズ ガルーンなどの開発・販売を行っている会社です。サイボウズの株主総会に参加するのは初めてです。
2011年4月22日(金)の株価 16,980円(東証1部 4776) 1株単位 1月決算
PER 28.0倍、PBR 1.78倍、配当利回り 1.79%、株主資本比率 79.8%
監査費用 2,500万円(売上比 0.47%、営業利益比 3.25%) あずさ監査法人
株主優待 なし
サイボウズ(4776)のホームページ
サイボウズ(4776)のヤフー株価情報

過去10年間の株価推移をみると、2006年前後に人気化して急騰しています。その後は値下がりが続き低迷が続いています。最近では東日本大震災の影響も大きく受けています。一方、業績は赤字になったことはないものの、2006年をピークに低迷が続きました。M&Aなどのグループ戦略が失敗したようです。

スケジュール
10:00〜11:01 事業報告
10:05〜10:08 監査報告 橋本正昭監査役
10:08〜10:14 営業報告 女性生ナレーション+スライド
10:14〜10:59 青野慶久社長から対処すべき課題など説明
11:02〜11:04 決議事項の説明
第1号議案 剰余金処分の件 前年と据置き 478円(単体の配当性向50%)
第2号議案 取締役3名選任の件 任期満了に伴い3名全員再任
第3号議案 監査役1名選任の件 1名再任
11:04〜11:46 質疑応答 質問者5人+ネット+α 計13件 42分
11:46〜11:47 議案の採決 拍手方式 すべて可決
11:48〜11:50 役員紹介 名前のみで挨拶なし

お土産 クリアファイル、ボールペン、サイボウズLiveシール 後渡し
飲み物サービス エビアン330ml
事業説明会 事業報告のなかで青野社長から詳しく説明
懇親会 なし
注目の株主総会格付けですが、事業の現状と今後について青野慶久社長から詳しいプレゼンテーションがありましたし、質問に対しても自らの言葉で株主に語りかけていました。株主総会のネットを通じた一般公開も、多くのステークスホルダーにサイボウズを理解してもらおうと感じられました。一方で会場まで足を運んだ株主へのお土産はあまり嬉しくないものですし、役員の方々と歓談できる懇親会などもありませんでした。これらを総合的に判断し、サイボウズ(4776)の株主総会格付けは 『D+』 としました。
議決権を有する株主数 16,940名、その議決権数 527,578個
議決権返送&出席株主数 2,075名、その議決権数 316,676個

サイボウズの株主総会は昨年に引き続き、東京証券取引所2階 東証ホールで行われました。
今回も夜行高速バスで東京に向かい、6時前には到着予定でしたが、東名高速上り線で大型トラック2台が衝突・炎上する事故があり、4時間も通行止めになり間に合わないのではないかと焦りました。9時過ぎに着いたので何とか間に合いましたが、せっかくコストをかけて株主総会のために東京まで行くのに、間に合わないのでは意味がありません。サイボウズは昨年から、株主総会の様子をユーストリームで生中継しているので、こんなことがあるなら家で見ていた方が良かったですね。
今年はニコニコ生放送でもライブ中継し、ネットから質問も可能でした。家から株主総会に参加できて質問までできるなら、会場まで来るメリットはお土産がもらえるくらいです


さらに言えば誰でも株主総会に参加できるなら、サイボウズへの投資で損失を出すリスクを取ってまで株主になる意味がないな〜とも感じました。実際に損失がふくらむ一方ですし

2万人以上の人が見ていた様ですが、そんなに多くの人が見ている前で質問するというのも勇気が要ります。質問しにくいな〜と感じてしまいました。昨年は株主の発言部分はカットしたようですが、今年はそのままライブ中継されていました。株主が希望すれば中継には流さないという説明でしたが、「中継しないで」という声は流れてしまうわけで、株主の発言部分については流さないという配慮は必要ではないかと感じました。全国に自分の声を響かせたいという人は、中継を希望すればいいと思います。プロ株主の方など全国に自分は健在だ

手数料もお得でGMOグループのGMOクリック証券もお薦めです

会場内には前方にテーブル付の席、後方に椅子のみの席が用意され、テーブル席は(4×2)×8のレイアウトでした。ライブ中継に写ってしまうのを恐れたのか(笑)前方のテーブル席はけっこう空いていました。100人近く来ていたようです。会場右端は社員株主の席になっていて、15人ほどの社員が参加していました。社員株主のうち株主総会参加を希望した人は参加を認めているそうで、質問はしないが回答では参加してもらうかもしれないと青野社長から説明がありました。実際に社員が指名されていて、けっこう無茶振りという感じもありました。来年は社員株主の株主総会参加が激減したりして

事業報告は、女性社員の方がその場で読み上げる形式で行われ、続いて青野慶久社長から対処すべき課題や今後の戦略について、スライドやデモ映像を使いながら説明がありました。45分間にわたる長い説明でしたが、分かりやすかったと思います。続いて決議事項の上程があり、質疑応答となりました。
まずはよく寄せられる質問について説明があり、その後会場からの質問、ネットから寄せられた質問という形で進められました。回答は青野社長中心に、担当取締役、株主総会に参加していた執行役員、社員株主など担当者からの回答もあって、とても良かったと思います。
質疑応答 質問の数字は前が質問番号、後ろが質問者番号を表しています
(1-良くある質問)50%の配当性向にしたのはなぜか?
→内部留保が増えて手元現預金が40億円ほどもある。今後の事業投資は内部留保で対応できるし、リスクの高かったグループ再編がほぼ完了したので、配当性向を10%から50%に高めた。今までは単体ベースの利益に対する配当性向を指標にしていたが、グループ再編も完了したので今後は連結利益に対する配当性向とする。
(2-良くある質問)東日本大震災の影響は?
→サイボウズは東北に拠点がなく、お客様も全国に分散しているので、今のところは軽微な範囲に収まっている。3月、4月の状況を見てもそれほど業績への影響はない。業績修正の必要もないと考えているが、1億円の義援金を送ることを決めており、この分の影響は出る。義援金は今期5千万円、来期以降に5千万円贈る予定。地震発生後は義援金が多く集まるがその後は減ってしまうので、分割して贈ることにした。義援金の会計処理方法については調整中です。
(3-1)上海で中国のローカル企業向けにコンサルタントをしている。中国での展開について説明があったが、ローカル企業向けには高いのではないかと思う。ぜひ廉価バージョンを作って欲しい。
→確かにローカル企業向けと考えるとまだ高いと思う。廉価版にもチャレンジしていきたい。四川省で展開している事業では、価格も柔軟に対応して現地で受け入れられる価格水準を見極めていきたい。
(中原裕幸執行役員 マーケティング本部長)現地のローカル企業向けに、機能を絞った廉価版を開発していきたい。
(4-2)説明でよく分からなかったが、海外展開のタイムゾーン機能とは何か?
→(札辻秀樹執行役グローバル開発本部長)タイムゾーン機能とは、時差がある国との間でスケジュール管理などを行う場合、時差を自動的に調整して同じ時間に会議などが行えるようにする機能です。
(3-2)海外向けの売上が日本を上回るのはいつ頃か?
→難しい質問で社内でも目標値は持っていない。というのは日本国内の売上もまだ伸ばせると考えているからです。クラウド化で今まで取れなかった顧客も獲得できるし、先ほど見てもらった「kintone(キントーン)」なども投入していく。海外ではまだ実験規模の売上で、上海は黒字化したものの全体の売上に占める割合は1〜2%程度です。海外売上が10%くらいになってきたら目標を掲げていきたい。
(4-2)今後海外展開を進めるには外国人の採用も必要なのではないか?
→(山田理取締役 人事・財務担当)上海では45名の中国人メンバーが開発を行っている。ベトナムでも21名のベトナム人が開発にあたっている。国内でも数名の外国人社員がいる。今後の海外展開を睨んで現地を理解できる社員も増やしている。海外で事業展開するには現地採用が重要だと考えている。サイボウズでは採用にあたって日本人・外国人などの区別は考えず、世界中にグループウェアを広げ、チームワークの向上に貢献するサイボウズ人を世界中から集めていきたいと考えているし、そうした人々が働きやすい会社を作っていきたい。
(5-3)(女性)女性が使えないとユーザー数は伸びないと思う。特に主婦層などは未開拓だと思うので、主婦層でも使えるようなサービスが必要ではないか?
→主婦層にはサイボウズLive中心に浸透させていきたい。20名までは無料で使えるので、主婦層の方にも適していると思う。サイボウズはビジネス寄りに展開してきたので、デザインなどは少し堅くて取っ付き難いかもしれない。まだ発展途上なので使いやすいように改善していく。
(サイボウズLive担当者)まずは携帯向けの機能強化を考えている。今後もバージョンアップしていくので期待して欲しい。
(6-4)損益計算書を見ると原価率が非常に低いがなぜか?逆に販管費率は高い。
→(山田理取締役)原価の内訳は人件費の割合が高い。安い原価で作った商品がたくさん売れると原価率は低くなる。ソフトウェアはCD−ROMに焼くだけなので原価率は低い。さらにダウンロード販売も伸びているのでさらに原価率は低くなる。販管費については、開発以外の人件費が多い。売上にまだ貢献していない開発費なども含まれる。広告を積極的に行っているので、広告宣伝費の割合も高い。あとは地代・家賃で、これらで多くの部分を占めている。
(青野社長)パッケージソフト販売の場合、すべての開発費が原価に入るわけではない。基礎的な研究開発費などは原価ではなく販管費になる。
(7-4)株価が低迷しているが現状の株価をどう考えているのか?IR活動への取り組みは?
→株価が低迷していると認識している。歴史的に見ても低水準だと思う。ただ株価はマーケットが決めるものであり、会社としてできるのは今行っている投資を業績につなげることだけです。40億円の手元現預金に対して時価総額は80億円ほどなので、自社株買いも選択肢と考えている。10億円くらい自社株買いをすれば効果は大きいと思うので、今後社内で検討していきたい。
(注記)株価が低迷すると自社株買いをして株価を上げろ

(8-5)先ほど地震の影響はほとんどないと説明があったが、3月の対前年売上は大きく落ち込んでいる。これは計画通りの落ち込みということなのか?
→(中原裕幸執行役員 営業本部長)3月の売上は予算比では82%程度だった。継続サービスの売上が6割を占めているが、残りの新規案件部分が震災の影響を受けている。客先の稟議処理などが止まり導入時期が遅れるなどの影響が出て、3月の売上は計画を下回ったが、案件自体が無くなったわけではなく時期がずれただけであり、四半期ベースや半期ベースでは調整できると考えている。
(9-5)40億円の手元資金について、自社株買いも検討していると説明があったが、バランスシートを見ると有価証券20億円が登場している。他社ではリスクの高い有価証券に投資して失敗する会社もあるが、余資運用はどのように考えているのか?
→リスクの高い運用はせずに、安全性の高い現預金で運用していく方針です。バランスシートの有価証券20億円は譲渡性預金であり、現預金と変わらないと考えてもらっていい。
(10-5)サイボウズモバイルKUNAIクナイを第3の柱に育てていくと説明があったが、グーグルも Google Appsとアンドロイドに力を入れていて、グーグルと真正面からぶつかる様に感じる。勝算はあるのか?
→さすがに正面衝突するとかなわない相手だと思うので、時代の流れには乗りながらも自分達らしいポジションを取っていきたいと考えている。グーグルさんは検索エンジンや広告収入が中心で、ビジネス向けでの信頼感はまだまだだと思う。Google Appsはサイボウズの提供するグループウェアとは全く違っていて、Gメールが中心でカレンダーを拡張したような製品です。これはサイボウズの目指す方向とは反対です。サイボウズはNo E−mailを進めていて、Eメールの限界を感じている。サイボウズは掲示板型の情報共有ができるスケジューラーを中心に展開しており、差別化できると考えている。グーグルは強敵だが、情報共有の分野では差別化を図ることで生き残っていけると考えている。と言っても結果が出てこないと信じてもらえないでしょうが、私たちはそう信じてやっていく。
(11-5)説明は分かるが、グーグルもビジネス向けにも力を入れてくると思う。ロータスが2位だと説明があったが、グーグルとロータスが手を組んだりしたら脅威ではないか?正面からぶつかるより提携するなどの方向もあるのではないか?
→アメリカでは大手のソフト会社に集約が進んでいて、サイボウズのような中小規模のソフト会社は大手に吸収されている。IBM、HP、グーグル、マイクロソフト、シスコ、こういった超大手のIT企業がさらに巨大化している。そのような中を我々のようなネズミのような小さな会社がどうやって荒波を生きていくか?というようなイメージです


(注記)個人的な感想ですが、グーグルも個人向けを中心とした検索や広告ビジネスから、ビジネス領域への進出に力を入れているように感じます。電算システムの説明会でも企業向けにGoogle Apps for Businessの販売やカスタマイズ開発に力を入れていくと説明がありましたし、中小企業を客先に持つ会社と提携して企業向けを開拓しています。クラウドを利用した企業向けのソフト提供というビジネスモデルは、一番グーグルが力を入れているように感じます。今は有償ですが、アンドロイドみたいに戦略的な価格戦略を取ってくるかもしれません。先週はACCESSの株主総会に参加しましたが、分野は違っても同じような状況に直面している様に感じました。ACCESSはグーグルのAndroidと真正面から勝負し、結局は主力のALPの開発継続をあきらめました。このあたりの戦略転換を間違うと厳しい結末が待っていると思います。サイボウズはマイクロソフトとの提携を選んだわけですが、ウインドウズ自体がグループウェア的なものを取り込んでいく方向もあるので、これも必要な提携だと思います。ただこれだけでは不十分で、グーグルなどとも部分的な提携が必要なのではないかと感じます。ACCESSとサイボウズの株主総会に参加して感じたことなどは、別途まとめてみたいと思っています。
(12-NET)ネットからも同じような競合状況についての質問が来ている。サイボウズLiveはフェイスブックのような強敵に勝てるのか?どんな点が優れているのか?
→14年間グループウェアの事業を行ってきたが、本当に競合が厳しい世界だ。最初はIBM、マイクロソフトが強敵で、やっと日本では勝てたかなと思ったら次はグーグルです。ネットに出るとフェイスブック、何とも言えないつらい気持ちになる(笑)サイボウズLiveとフェイスブックとの違いは、情報がオープンになるかどうかです。フェイスブックは人脈や書き込みなどがすべてネット上でオープンになる。それも素晴らしいが、オープンにするのが適さないような部分もある。人脈をクローズにしたい、この人とのやり取りは他の人には見られたくないなどのニーズもたくさんある。サイボウズLiveはこうしたニーズにも対応しており、グループ内のやり取りはグループ内の人しか見れないようにしている。こうした違いでフェイスブックとは違うポジションが築けると思っている。インターネット=オープンと言われているが、次の時代のインターネットはオープンな世界の中にクローズな集まりがたくさんできている、そんなイメージになってくるのではないか。その意味ではサイボウズは早く取り組んでいると考えている。
(13-NET)配当を増やしたのは成長を諦めたのか?もう投資先はないのか?
→厳しい質問だが、そうではない。成長を諦めるくらいならサイボウズを閉じてもいいと考えているくらいだ。サイボウズはやっと日本のごく一部の会社にサービスを提供できるようになった段階であり、世界中にサービスを提供していきたい。そのためにも成長は決して諦めない。配当を増やしたのは、サイボウズを支えてくれる株主の方々にもっと長く、もっと大きく支えてもらうためです。株主の皆様にはこの点をしっかりとご理解いただき、サイボウズ製品のご利用、利用促進にご協力をよろしくお願いします

以上で質問も出尽くし、質疑応答は終了となりました。
青野社長をはじめ、質問には丁寧に答えていて好印象でした。応援したいという気持ちになりましたが、社長が言っていたように非常に厳しい業界で日夜戦っています。こういった会社の将来像を描くのは本当に難しいと感じています。戦略がうまくいけば大きく成長する可能性がある一方で、一夜にして状況ががらっと変わってしまうこともあり得ます。応援はしたいんだけど投資判断が難しい会社だな〜という印象でした。
ブログランキングに参加しています


トップ3を目指しています!クリック応援よろしくお願いします

【株主総会の最新記事】
- 昭和ホールディングス2017年株主総会レ..
- あみやき亭2015年株主総会レポート
- ダイオーズ2013年株主総会レポート
- 三井物産2013年株主総会レポート
- バンダイナムコホールディングス2013年..
- 日本航空2013年株主総会レポート1
- ディーブイエックス2013年株主総会レポ..
- アミューズ2013年株主総会レポート
- そーせいグループ2013年株主総会レポー..
- ディーエヌエーDeNA2013年株主総会..
- テクマトリックス2013年株主総会レポー..
- ココスジャパン2013年株主総会レポート..
- スパークス・グループ2013年株主総会レ..
- シンプレクスホールディングス2013年株..
- アトム2013年株主総会レポート
- あみやき亭2013年株主総会レポート
- 松竹2013年株主総会レポート2
- 松竹2013年株主総会レポート1
- クリエイト・レストランツ2013年株主総..
- GMOインターネット2013年株主総会レ..
お土産や懇親会はごく一部の株主への過大なコストで、投資家全体にとっては喜ばしくないもの。
ランクをつけるのは勝手だけれど、無責任な報道で消費者や投資家、国民を煽り、利益を得ようとするマスコミとおんなじですよ。もっと賢くなりませんか?