株主総会ではないですが、3月30日の株主総会に向けて行われている委任状勧誘のための説明会なので、株主総会レポートに掲載します。
サッポロホールディングスの現経営陣と、筆頭株主であるスティール・パートナーズは、経営方針を巡って対立しており委任状争奪合戦になっています。スティール・パートナーズは自分達の主張を株主に伝え、賛同者を増やすために全国で株主向け説明会を開催しています。

2010年3月16日(火)の株価 457円(東証1部・札幌 2501)1,000株単位 12月決算
PER 37.2倍、PBR 1.51倍、配当利回り 1.53%、株主資本比率 23.4%
株主優待 株数に応じてビール詰め合わせ、清涼飲料水、寄付から選択
サッポロホールディングス(2501)のホームページ
スティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンド
サッポロホールディングス(2501)のヤフー株価情報

過去10年の株価推移

スティールパートナーズの説明では、競合他社と比べると業績・株価とも低迷していて、今の経営陣には責任を取って退任してもらいたいということです。
スケジュール
19:00〜19:21 スティール側から提案内容、提案に至った背景を説明 スクリーン使用
19:21〜19:50 報告事項の質疑応答 質問者5人 計10問 29分
19:50〜19:59 委任状の書き方についての説明
お土産 なし

飲み物サービス テーブルに水
経営戦略説明会 なし
懇親会 なし
会場内には多くの席が用意されていましたが、最終的な出席者は7名でした。スティール側の人は10人以上いたので、出席者数より多かったですね。19時からの開催ですし株主も関心がある件なので、もっと多くの参加者がいると思っていただけに意外でした。出席者数から見る限り、委任状争奪戦(プロクシーファイト)ではスティール側が厳しい状況なのかなと感じますね。
出席した株主の方々のプライバシーを守るため、会場内での撮影はご遠慮くださいということでしたが、会場に設置されたカメラは活発に動いていて、質問した人などを撮影しているように感じました。あまりいい気分ではないですね。
会場の後ろ半分は委任状を記入するスペースになっていました。弁護士も待機していて、記入ミスのないように相談に乗れる体制になっていました。
出席者は3人ですが、発言したのはスティール側の代理人の田中氏と取締役候補になっている内藤氏だけでした。内藤氏は元ポッカの社長で飲料業界に詳しい人物として、取締役候補に推薦しているそうです。ポッカのMBOでは内藤氏を批判する意見もあるようです。私はポッカに投資したことはないので、詳しくは分かりません。
まず田中氏からスティール側が提案している取締役候補について説明があり、その後スクリーンを使って、競合他社と比べたサッポロの現状とスティール側の提案内容などの説明がありました。
ビール工場など稼働率の低い過剰設備を抱えていて、優良な不動産も有効活用できていない。一番大事な広告宣伝費を削ったり、不動産を切り売りして利益を捻出していて、今後先細りになるのが目に見えているのに、会社側は過大な中期計画を発表しているなど、スティール側の見方が説明されました。
ブランド力のあったエビスも広告宣伝を削減した影響で、サントリーのプレミアム・モルツに抜かれ、ブランド価値を毀損している。
スクリーンを使って説明していましたが資料が2部に分かれていて、説明するページも次々とジャンプするので、ついていくのが大変でした。分厚い資料ですしポイントを絞って説明したのでしょうが、ちょっと分かりにくく感じましたね。かなり細かく分析しているようです。資料をよく読み込めば、今後の投資の参考になるかもしれませんね。
その後質疑応答となりました。
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質疑応答 質問の数字は前が質問番号、後ろが質問者番号を表しています
(1-1)資料で過剰な醸造能力とあるが、今までも工場などは閉鎖してきている。それでも過剰なのか?
→(田中氏 以下敬称略)サントリーと比較すると2007年ごろのサントリーの販売量と今のサッポロが同じくらいです。それなのに醸造能力はサッポロの方が多い。年々販売数量が落ちて生産効率が低下している。サッポロがやるべきは固定費の削減だと思う。工場の削減やブランドの絞込みなどを提案している。工場を閉鎖するといっても商業施設などに転用でき、必ずしも売却しろと言っているわけではない。この3期こういったことが行われなかったので、売上が減少しブランド価値を毀損してしまったと考えている。
(2-2)業績を立て直すにはサッポロ社員の協力が不可欠であり、社員と一丸になって取り組む必要があると思うが、社員への説明などは行っているのか?委任状争奪戦となり、社員が一番不安に感じているのではないか?新しい経営陣と一丸になって改革に取り組んでいけると考えているのか?
→(田中)我々も委任状争奪戦は望んでいなくて、水面下でアサヒとの提携を打診したりしたが、興味がないとまったく取り合ってもらえなかった。PB商品も作る必要があるのではないかなど経営改善の提案も行ってきたが、ブランド価値を毀損するのでやりたくないなど受け入れられなかった。昨年末には経営改革ができる人を経営陣に入れて欲しいと要望したが、受け入れられず、やむなく委任状争奪戦となってしまった。
会社側には社員を委任状争奪戦に巻き込まないでくれと要望している。昨年はアデランスの経営陣を刷新したが、現状業績も回復してきて株価も上がってきている。しかし当時は社員との関係改善に苦労した苦い経験がある。
(内藤氏 以下敬称略)補足させてもらうと、確かに社員の方々が一番不安に感じていると思う。我々が経営陣に選ばれた場合、まず最初にすることは社員と語らうことだと思う。手分けして現場に足を運び、社員の方々の声を直接聞いていきたい。私が察するに、現状を疑問視している社員の方々もたくさんいると思う。そういった方々が今後の改革の主役になる方々です。目標を一つにして、社員の人たちの心に火をつけることが大事だと考えている。
(3-1)業者向けビールに力を入れていくということだが、業者向けということが良く分からない。
→(田中)業者向けというのは業務用ビールで、居酒屋などに出荷するビールです。サッポロの場合ブランドでは『黒ラベル』になるが、落ち込みが大きい。この落ち込みを止めないと業績回復は厳しいので、きちっと強化する必要がある。
(4-2)どちらも過半数を制しているわけではないので、たとえ今回委任状争奪戦に勝っても、来年は会社側が巻き返してくるかもしれない。このような混乱を避けるため、第三者割当増資などで自社に多くの株式を割り当てるなどをする恐れはないのか?
→(田中)サッポロは1,900億円という有利子負債も多く財務内容も良くないので、第三者割当増資は難しいと思う。株式が希薄化するので株主に対する影響も大きい。きちんとした理由がないと第三者割当増資はできないので、難しいと思う。
(5-2)そうではなくてスティール側が勝った場合、自分たちに有利になるように新株を発行して、議決権の過半数を抑えるようなことは考えていないのか?という質問です。
→(田中)絶対にやりません。今回の経営革新は、すべてのステークホルダーの方々の価値を上げるためですから、ステークホルダーである株主の方々に迷惑をかけるような提案を、経営陣に行うことはありえません。みなさんと同じ立場ですので、断言させて頂いてもいいが、そのようなことは行いません。
(6-2)今後、毎年の様に株主総会で委任状争奪戦になってもやらないのか?現状の株主分布で推移すれば、毎年委任状争奪戦になる可能性もありますよね?
→(田中)我々は筆頭株主なので当然ですがきちっとサポートします。今後は新しい経営陣が株主様と対話して、理解を求めていく必要があると考えています。ちなみにアデランスでは、我々が送り込んだ経営陣が大株主をもれなく回って、改革案を説明しご理解を頂いている。
(7-3)内藤さんにお聞きしたいが、先ほど社員と話をする必要があるということだったが、そう感じた具体的な理由があれば教えて欲しい。
→(内藤)我々はサッポロで育ってきた人間ではないので、サッポロの常識と我々の常識の間には大きなギャップがあると思う。だから意思の疎通を欠くようなことがたくさん出てくると思う。外から役員を入れた場合、プロパーの方々と葛藤が起こるのは当然です。それは無くさないといけないし、社員の方々にペーパーを回すだけでは我々の考えを理解してもらえないと思う。やはり喧々諤々議論することが大事だと思う。
(8-3)現在の経営陣と社員の間で葛藤があったり、目標の立て方などに問題があるので(社員と話をする必要がある)と感じたのではないかと思って質問したが、具体的にそのような問題はないのか?
→(内藤)私も(サッポロ内部の)状況を知っているわけではないので(私の過去の経験から推測した)仮定の話です。
(9-4)サッポロとアサヒが分かれて、アサヒが低迷していた時に外部から樋口さんが来て、スーパードライを開発して爆発的に売れて、今のアサヒがある。サッポロは業務用でも会社の方針だから(力を入れなくても)しょうがないというあきらめムードを感じる。そういったムードを一新するためにも、外部から経営陣を入れることはいいことだと思う。
→貴重なご意見ありがとうございます。
(田中)モルガンスタンレーさんが、サッポロから恵比寿ガーデンプレイスの15%を500億円で購入したが、その1年前にはANAホテルを買収している。その時大手ビール会社3社は、うちのビールを入れてくれと慌てて飛び込んできたが、サッポロは来なかった。モルガンスタンレーは恵比寿ガーデンプレイスの中に本社があるのに、目の前にあるサッポロからは誰も担当者が来なかったそうです。歩いてもすぐの距離なのに来ないというのが印象に残っています。
社員のなかにあきらめの気持ちもあって、死に物狂いで頑張るという感じが伝わってこない。
(10-5)黒ラベルは、以前は「けっきょく飲んでる黒ラベル」というCMがあったが、最近は印象に残るようなコマーシャルがない。今後マーケティング面でどの世代に訴求していくのか?
→(内藤)具体的に言うのは難しい。私はエビスを飲んでいるが、『エビスあります』というコピーは、シンプルでとてもいいと思う。一方黒ラベルについては『男だったら黒ラベル』というのがあったが、今はどんなCMをやっているのか正直分からない。ブランド戦略が分散しすぎている。プレミアムモルツは矢沢永吉をCMに起用しているが、ポッカ時代にコーヒー飲料で、同じくサントリーのBOSSが矢沢永吉を起用してやられた経験がある。今回もサッポロエビスがサントリーの矢沢永吉にやられている。どの世代に訴求していくのか?は難しいが、一つ言えるのは明確なメッセージを出さないといけないということです。その部分が欠けている。具体的には何も言えないが、みなさんに選んで頂いた段階で、具体化したい。
(田中)私たちが競合のサントリーさんやアサヒさんに行って話を聞くと、第3のビールは最初サッポロが市場を作ったが、清涼飲料に近い市場なので次々と新商品を投入し、広告宣伝費もかけなければいけない。それが売上に結びついてくるが、サッポロには清涼飲料市場でのノウハウがない。
サッポロは広告宣伝費を600億円から350億に減らしているが、ほとんどをビールの宣伝に使っている。一方アサヒ、キリンは900億、サントリーは1,300億円使っている。広告宣伝費の額が少ないのにブランドが分散していて、焦点がぼやけていると思う。
以上で質疑応答は終了しました。この後は弁護士から委任状の書き方について説明がありました。
会社側、スティール側両方の提案に丸を付ける人がいたり、記入漏れで会社側から認められない委任状も出ているようで、詳しく説明していました。両社の提案している候補者の中から、特定の候補者だけ否認したり選任することも可能ですが、サッポロの取締役人数の上限は10人なので合計人数が10人以内になっていないと無効になるなどの説明がありました。
資料はかなり詳しくサッポロと他社について分析されていて参考になると感じますが、会社側の反論も聞かないとどちらを支持するかは判断できないと思います。田中さんは質疑応答でもしっかりと答えている印象でしたが、内藤さんはまだサッポロの内情についてよく理解していないようで、過去の経験や抽象的な回答が多かったように感じます。まだ取締役になる準備が十分できていないんじゃないか?という感じもしますね。他の取締役候補は来ていないので分かりませんが、一番質疑応答に対応できる候補者を参加させていると思うので、他の取締役候補の方々は大丈夫かな?という疑問は感じます。経歴は文句なく素晴らしいんですけどね

3月30日の株主総会では、取締役候補の方々の所信表明があるのでしょうか?
全体的な印象としては、サッポロはシェア4位に甘んじていてジリ貧なので、外部の候補者の力量は分かりませんがそれでも新しい人にやってもらった方が変化が期待できるのでは

要は影の実力者次第で良くも悪くもなるので、結局はスティールパートナーズが本当にサッポロを良くしたいと考えているのか


スティールパートナーズ主催サッポロ株主向け説明会は今日は大阪、明日は東京と佳境を迎えます。参加できる方はいろんな質問をして、どちらが期待できそうかしっかり自分の目で見て欲しいと思います。どんな質疑応答になるのかに加えて、どのくらい参加者が集まるのかも気になりますね


3月18日に開催された東京コンファレンスセンターで行われた説明会に参加した方のブログを見つけました。
東京ではさすがにたくさん質問が出たようです。名古屋と違って出席者も多かったんでしょうね。
アドバンテッジ被害牛角株主のブログ スティールの株主説明会。
質問も厳しい内容が多い様で、質問時間も短いように感じますね。名古屋とはかなり雰囲気が違うように感じます。実際に出席したわけではないので雰囲気までは分かりませんが

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昔の黒ラベルのCMや(他社ですが)モルツのCMはCMとしての評価は高くてもシェアには全然結びつかなかったという話は結構有名だと思うのですが、どなたも触れてないですねぇ。
私の記憶違い?
東京と名古屋ではかなり感じが違うな〜というのが率直な感想です。東京の説明会は実際に参加したわけではないので、単純に比較できませんが。
ブログの趣旨から言っても、若干ファンドや内藤氏に対して批判的な考えがあると思うので、記事の内容にもバイアスがかかっているかもしれません。
私が見る限り、サッポロの現状を分析したスティールのレポートは良くできていると思いますし、ファンドの見方として参考になるんじゃないかと感じました。スティール側として参加していた田中さんもいろんな質問に的確に答えていたと思います。まあ年収も超高額でしょうし優秀な方なんでしょうから当然なのかもしれませんが(笑)
一方取締役候補の方はまだ準備不足というような印象を受けました。30日の株主総会までには経営方針などもはっきりさせて、株主に向けてアピールして欲しいと思います。
現経営陣ではシェアも低下する一方なので、経営陣を刷新するのはいいことだと思います。あとは期待できそうな候補なのか?という部分なのだと思います。
私はサッポロ側、スティール側の選任した候補の中から、期待できそうな人を最大10人選ぶのがベターな選択なのかな?と感じています。
ビールのCMについては、ほとんどテレビを見ないのでよく分かりません。すみません(^_^;)
業務用ビールのシェア減がひどく店舗・法人向け営業のテコ入れは必要です。
現状の問題点に関するスティール側の主張は尤もですが目新しいものはなく「だからどうしたいんだ?」という疑問が膨れ上がってしまいました(まぁ手の内をさらけ出すわけにはいかないのでしょうね)
旧大阪工場跡地はどうしたいのでしょう。商業施設にという話は尤もらしい話なのですがアクセス面やショッピングモールの乱立する現状など考えると、よほど上手くやらないと厳しいと思います。恵比寿駅前とはわけが違います。
私は以前札幌に住んでいて、当時何度も行っていたサッポロファクトリーはあまり繁盛しているようには思えませんでした。
昔のCMでは豊川悦司さんと山崎努さんが温泉卓球などを繰り広げる映像がCMファンには話題になり、CM好感度調査でも上位になりましたがシェアは伸びませんでした。モルツのCMもCM好感度調査で1位を何度か受賞してたと記憶してますがシェアには全く結びつかないという(新聞?)記事を記憶してます。
自分の場合はCMを見て新製品なら試そうと思いますが、CMが動機で他社製品に乗り換えようとあまり思わない人間です。
嫌いな芸能人がCMにでている商品の購買意欲が低下するというのはあるかもしれません(苦笑)
サッポロの株主総会レポートも出来上がりましたので、ぜひご覧ください。
会社側の圧勝で終わりました。
私には現経営陣が何を理由に企業価値を向上させた!と主張しているのかが理解できません。
5年かけてもジリ貧が続いているなら、経営陣交代を求めるのは自然な流れだと思います。一方スティール側の候補者もベストとは言えない感じで、株主も悩んだんじゃないかな〜と思います。
スティールには万人を納得させるような候補者を揃えて欲しかったですね。
CM好感度と売上はすぐには結びつかないことも多いでしょうね。ただ企業イメージが良くなれば、長い目で見れば業績への貢献もあると思います。
ほとんどテレビを見ない人間がコメントするのもどうかと思いますが(笑)