2011年5月28日(土)10時からベルサール渋谷ファースト2階ホールで開催された
パルコ(8251)の第72期定時株主総会に行ってきました。パルコ2011年株主総会レポートその2では、
パルコPARCO2011年株主総会レポート1に続いて、質疑応答中心にまとめています。
質疑応答 質問の数字は前が質問番号、後ろが質問者番号を表しています
一部の株主から書面で質問が来ており、会場の株主からの質問とも重複すると思われるので、まずはこちらの質問についてパルコとしての考えを説明するとのことで、書面質問に対する回答が行われました。質問者は一部株主と説明があっただけで明かされませんでしたが、株主総会後のマスコミ報道では「
イオンと森トラストが、日本政策投資銀行が保有する転換社債の扱いについて説明を求めた」となっているので、2社からの共同質問だったようです。株主にも説明して欲しいですね。
(書面質問1)転換社債発行を含む提携を行った経緯、借入など他の手段の検討はどう行ったのか?
→(
小嶋一美専務執行役財務担当)2010年8月25日に発表した中期経営計画を実現するために資金調達が必要となり、日本政策投資銀行の企業成長を支援する付加価値創造型エクイティ投資がパルコのニーズと合致し、パルコの企業価値向上・株主価値向上に資すると判断したので資本業務提携を行った。日本政策投資銀行には単なる外部のコンサルタントやアドバイザーではなく、資金の出し手として中期経営計画にコミットメントしてもらう戦略的パートナーとして、金融面から支援いただいている。借入ではなくパルコ株式への転換ができる転換社債にした理由は、中期経営計画に掲げた成長戦略には相応のリスクがあり、さらに2015年の次の中期経営計画に向けた資金需要もある。外部環境の不透明さもあり、保守的な財務戦略を取ることがパルコの成長性と健全性を維持するには不可欠と考えた。
(書面質問2)CB行使により発行株式数が増えると希薄化により既存株主の利益が害される。この点についてはどう配慮しているのか?
→(
小嶋専務)十分に利益が増加した段階で株式数が増えることが望ましいという判断から、単純な新株発行ではなく現状の株価に30%近いプレミアムを付けた転換価格としており、さらに提携期間である3年間はパルコの同意なしの株式転換を禁止したり、転換株数に制限を設けるなど一定の制限を行っている。
(書面質問3)日本政策投資銀行はどのように投資回収を行う考えなのか?また中期計画の達成が困難になった場合、CBを期限前償還する意向はあるのか?
→(
小嶋専務)将来的な投資回収方法については、基本的に日本政策投資銀行の判断事項となる。パルコ側が言及する立場にはないが、提携発表のプレスリリースにもあるように、日本政策投資銀行は株式転換後も資本業務提携の合意に基づき、安定的かつ継続的に保有する方針であると聞いている。
中期計画の実現性については、東日本大震災の発生により上期に一時的な影響はあったが、仙台パルコも営業再開後の4月売上は前年同月を8.2%上回るなど好調に推移している。中期計画に掲げる施策は概ね順調に進捗しており、未達になった場合の対応については仮定の話であり回答を控える。
(書面質問4)日本政策投資銀行との資本業務提携の進捗状況はどうなっているか?提携の内容と進捗状況、パルコの利益・財務状況への影響はどうなっているか?また約101億円を投じて池袋パルコ別館の信託受益権を取得したが、パルコの資産効率性ROAにどのような影響があるのか?
→(
小嶋専務)提携の効果としては、指摘のあった池袋パルコ別館の信託受益権取得や、海外ではキャピタモールズ・アジアCapitaMalls Asia社との業務提携、EC事業ではスタイライフとの資本提携がある。これらの戦略が今後利益に結びついてくると考えている。厳しい環境下だがパルコのROAは4.5%前後で推移しており、信託受益権への投資も同程度と見込んでいる。今後は池袋本館と合わせて機動的な改装などが行えるので、池袋パルコの収益性向上が見込めROAの改善にもつながる。
(書面質問5)日本政策投資銀行からパルコの特定の株主に、転換社債を株式に転換する意向がある旨の通告がなされたそうだが、パルコが関与しているのか?
→(
小嶋専務)パルコが回答する問題ではない。パルコから日本政策投資銀行に働きかけた事実もない。日本政策投資銀行は、今回のイオンの提案は性急でありパルコの企業価値向上に寄与しないという当社の考えを理解したうえで、パルコのパートナーとして転換社債転換の意向を示したと聞いている。
(
注記)なかなか厳しい質問が続きましたが、書面質問は会社側の一方的な回答を聞くだけなので物足りないですね。ぜひ森トラストやイオンにはパルコの株主総会に出席して、日本政策投資銀行との資本提携の必要性や自らの考えをぶつけて欲しかったと思います。その方がお互いの主張がより明確になりますし、聞き応えのあるいい株主総会になるのではないでしょうか?まあパルコとしては株主総会での直接対決は避けたいでしょうし、イオンもパルコ信者の集まる中に飛び込むのは勇気が要るでしょうけどね(笑)
続いて会場からの質問となりました。

(6-2)取締役候補に非常に強い違和感がある。業績も好調なのになぜ今まで中期経営計画を進めてきた平野社長の名前がないのか?イオンや森トラストの意向で実績を出している役員を代える様ではパルコの企業価値向上につながらないのではないか?
→(
有冨慶二指名委員会議長)取締役候補決定までの経緯を説明する。3月31日に取締役選任議案について株主提案があり内容を検討したが、すべてのステークホルダーから支持されるような適正なバランスになっていないという結論になった。ステークホルダー間のバランスが取れ、取締役会として監督機能が果たせ、さらに株主総会で決議頂ける内容という難しい作業だった。指名委員会では公式・非公式も含め何度も協議を行い、今回上程した取締役候補案になった。この内容で納得頂き、森トラストの株主提案も取り下げられた。平野社長のパワーはパルコに必要と考えており、今後は専務執行役として残ってもらうので、これからもパワーを発揮してくれると思う。今回の取締役候補案は、少数株主も含めたステークホルダー間のバランスを考え、パルコの企業価値向上のために、そしてステークホルダーに納得頂くためのギリギリの内容だと考えているので、ぜひご賛同いただきたい。
(
注記)パルコの株主からすると、なぜ外野から色々とケチをつけられ社長まで交代させられるんだ!という想いがあると思いますが、上場企業である以上大株主の意向に沿った経営陣になるのはやむを得ないことです。特に今回の場合、森トラストとイオンで過半数近くを押さえているので、本気になれば全取締役を両社の出身者で固めることも可能です。今回の問題を難しくしているのは、日本政策投資銀行という本来中立の立場のステークホルダーがいるためで、割り当てられた転換社債が黄金株のような存在になっています。すべて転換すれば、パルコ側に有利な株主構成になるので、今度は一転してパルコ側の取締役候補案が通ることになります。このため最終的には両社とも一応は矛を収めた形になっています。そもそもの問題は転換社債の割当てにあるので、書面質問で経緯の説明を求めたのでしょうし、特に形勢が逆転するきっかけになった書面質問5についてははっきりさせたかったのでしょうね。
それにしても今回の議決権は2月末の株主に与えられるはずなのに、4月に転換しても議決権が発生するというのはおかしいのではないかと感じますね。まあ転換して大株主になってから臨時株主総会を開けば同じことなので、二度手間を省いたのかもしれませんが。
(7-3)日本政策投資銀行について先ほどDBGと言っていたが正式名称を教えて欲しい。
→Development Bank of Japanの頭文字を取ってDBJです。
(8-3)震災後のCSR活動について説明があったが、震災前からどんなCSR活動を行っているのか?
→(阿部正明常務執行役)全執行役とグループ各社の社長で構成するCSR委員会で、パルコの特徴を活かしながら、企業価値向上の一環としてCSR活動を行っている。地域、環境、文化、次世代の人材という4つの重点領域を定めて取り組んでいる。次世代の人材育成についてはお子様の就業体験などの活動も浦和の店舗で行っている。
(9-3)指名委員会などシステムは良いと思うが、使い方によってはこんなことになるんだなとよく分かった。良いシステムは続けて欲しい。
(10-3)海外進出にあたっては人材育成が重要。配当金を削ってでも人材育成に費用をかけて欲しい。
→3番目以降については貴重なご意見として承る。
(11-4)社外役員については責任限定契約を結ぶと書いてあるが、社外役員でも経営の監督とチェック機能を果たす人と、経営の助言をする人に分かれている。大株主は社長の人事も含めて口を出している。経営陣を監督する人は責任限定契約を結ぶのはもっともだと思うが、経営に対して色々意見を言うのであれば、責任を限定せず明確に責任を取っていただきたい(会場内から拍手)
→(事務局と少々打ち合わせ)株主の考えは理解するが、今回の7名は社外役員として入って頂き、役割は経営のチェックが中心なので、責任限定契約を結んで問題ない。執行役員を兼任するのは1人だけになるので、経営と執行がより明確になると考えている。
(
注記)なかなか鋭い指摘ですね。純粋な社外取締役と、森トラストやイオンから送り込まれた社外取締役では、求められている役割と責任の重さに違いがあるというのは確かにその通りだと思います。
(12-5)大株主が変われば、一般常識では大幅に役員を入れ替えるのが普通ではないか?資本が変わり森トラストやイオンの力が大きくなり、少数株主の意見が反映されなくなるのではないか?
→(
有冨指名委員会議長)独立した取締役によって監督機能が維持されないと、少数株主の利益が守られない。今回の取締役案では社外取締役8名中5名が独立取締役というのが一番のポイントだと思う。
(13-5)最近の新店は好調かもしれないが、過去に投資した物件の利益が減ってきているのが不満の背景にあるのではないか?経営陣が変われば方針や社員の評価基準なども変わるかもしれない。どうやって経営の継続性を保つのか?
→(
牧山浩三専務執行役 次期社長)前期増収増益だったのは福岡パルコの成功が大きい。福岡パルコは20店目のパルコではなく、新しいパルコの1号店という位置付けでマーケティングから始め、マーケットの期待を上回る成功を収めたと自負している。福岡パルコで得られたマーケティングなどのエッセンスを他のパルコに活かしていくことが、中期計画達成に向けた一番の近道になる。中期計画を執行するメンバーは今期も変更がないこと、取締役10名の構成もバランスが取れており、素晴らしいキャリアの方ばかりなので経営の監視もしっかりしてもらえ、サポートもしてもらえると思う。ぜひこの体制を支持して頂きたい。
(14-6)パルコにはパルコにしかないものがたくさんあるが、イオンはどこに行っても同じファストファッション、同じテナント、どこにでもある安物しか売っていない(会場から拍手

)パルコが大好きでよく使うので、イオンのようなどこにでもある店になってしまうのを心配している。具体的にどんな業務提携を行う考えなのか教えて欲しい。
→(
牧山次期社長)イオンから正式な提案を頂くことになっているが、イオンと同じようなファストファッションをやろうという提案は来ないと考えている。東日本大震災の発生により今までその対応に追われていたので、やっとお互いに提案を検討できるような状況になってきたと思う。今後業務検討委員会を設置し、イオンがパルコとどんなことをやりたいのか聞いたうえで、具体的な提携内容を検討していく。
(15-6)5年前の株主総会で買収防衛策も整備したと記憶している。まったく経営方針が違う敵対的株主が現れたのに今回なぜ発動しなかったのか?
→(
内田実特別委員会議長)特別委員会は平成20年の定時株主総会で承認された買収防衛策に基づき設置された委員会です。委員5名はすべて社外取締役でかつ東証に届け出ている独立役員となっている。今回の森トラストとイオンの問題も議論したが、先ほど説明があったように3社間で合意が成立したので、買収防衛策は発動しないという結論になった。
(
注記)この時点で質問者がいなくなり質疑応答が打ち切られそうになりましたが、手を挙げる人がいて続行となりました。意外と質問者が少ないんだな〜と感じましたね。関心があるのがみなイオン問題なので、もう聞くことが無くなったということなのかもしれません。
(16-7)具体的な提携内容も詰めていないのに、なぜイオン出身者を役員に迎えなければいけないのか?(会場から拍手)まずはイオンとの提携内容を詰めてから、役員を迎えるのが普通ではないか?
→森トラストから株主提案が出たという経緯がある。この提案通りだとパルコの経営体制が大きく変わってしまうので、色々と交渉しながら先ほど指名委員会から説明があったようなバランスの取れた合意ができた。
イオンの提案は役員交代という部分が大きく、次に業務提携という感じだったが、ガバナンスについては一旦合意できたので、今後は提携によってどのような事業シナジーがあるのか検討していく。今後両社で検討する中で、業務提携に進むのかが決まってくる。
(17-7)パルコの社員もイオンとの提携に反対していたのに、反対を押し切って提携したのはなぜか?
→突然のイオンによるパルコ株式の取得と役員交代提案で従業員にも反対や動揺が広がった。今後は牧山が社長となり経営執行体制も固まったので、社員も一旦は理解した。しかし今までの経緯もあるので、今後イオンと検討していく業務検討委員会の検討内容などを、社員にもきちんと伝えていく必要があると思っている。パルコは社員の能力で持っている会社なので、きちんと説明しながら進めていく。
(18-8)エリア特性に応じて都心型、コミュニティ型(地域型)の2業態に再編するが、それぞれの関係はどうなるのか?地域型は雑貨や食品の強化を行っているが、都心型でも同様の取り組みをおこなうのか?
→(
牧山次期社長)昨年から店舗戦略を都心型、コミュニティ型の2つに再編してきたが、パルコは都市型のライフスタイルプロデューサーを標榜しており、モノ・コト・サービスをいかに付加していくか?というおことは共通事項です。コミュニティ型は機能重視で、大型の雑貨店を入れるなどしているが、都心型では広域から人を呼べるようなゾーニングで表現するなど、表現の仕方が異なっている。
(19-8)イオンと連動した商品戦略やイベント開催などが、パルコのブランドアップになるのか?出店戦略では、イオンが開発したショッピングモールに出店するような可能性はあるのか?
→(
牧山)提携内容については今後イオンと協議していくので、仮定の質問には答えられない。
(20-9)今後の出店は都市型店舗、コミュニティ型店舗のバランスの取れた出店を続けていくのか?
→(
平井裕二執行役開発担当)今後の出店については、パルコの持つ都市型商業のノウハウを活かして、都心部に経営資源を集中していきたいと考えている。都心の百貨店などからの業態転換も増えており、アライアンス戦略なども駆使して首都圏・関西圏に店舗網を広げていきたい。現在も複数のプロジェクトが動いており、一刻も早く実現させたいと考えている。
この時点で11時31分になり、かなり審議も尽くしてきたのであと1〜2名にして欲しいとの平野社長からのお願いがありました。
(21-10)なぜ筆頭株主である森トラストとの関係がこじれたのか?報道では日本政策投資銀行からの出資について森トラストは知らなかったと言われているが、筆頭株主なのに事前に説明しなかったのか?何も相談がないのは困るのではないか?パルコは株主というものをどう考えているのか?イオンと共同提案という形になっているが、森トラストにしっかりと説明していたらこんなことにはならなかったのではないか?
→色々な案を検討したうえで、日本政策投資銀行からの出資を決めた。内容的にインサイダー情報に該当するので、発表の前日に森トラストを訪問して説明した。説明が不十分だった部分もあるので、この点については森トラストさんにお詫びした。
以上で質問がなくなり、事業報告に対する質疑応答は終了となりました。想像していたより質問が少なかったですね。続いて出席株主数や議決権数について報告があり、決議事項の審議となりました。
とはいえ議案はここまで質問が集中してきた取締役選任議案だけなので、いまさら質問もなくすぐに議案の採決が行われました。
森トラスト、イオンとの間で一旦合意ができているので、問題なく承認されました。質疑応答の中でも一旦合意ができていると強調しており、平野社長の無念さが現れているように感じました。続いて新たに選任された取締役の紹介があり、パルコの株主総会は終了となりました。
ブログランキングに参加しています

トップ3を目指しています!クリック応援よろしくお願いします